スマホよりも小さく軽く、防水機能も備えていながら簡単に高画質の360°動画を撮影できるアクションカメラ、Insta360。
最近は広告やテレビの撮影で見かけたり、観光客の方を始め街中で使っている姿を目にすることが増えてきました。
ただし、次世代の到来を感じる魅力的な商品であっても使っていて不便に感じることや、気をつけなければならない点ももちろんあります。
この記事では、Insta360(主にX3、X4モデル)での360°VR映像の撮影を1000回以上行い、
ホテル・旅館特化のVR映像サービスYADORI VRを始めとしたVR映像を制作する弊社 株式会社モノガタリの経験を、5つのカテゴリに整理し各対策ポイントもまとめました。
Insta360に毎日触れている人間だからこそわかる、Insta360 X3・X4を使う上での注意点とその対策を事細かにまとめていきます。
・Insta360って流行っているけど、本当に安心して使えるの?
・何度も使っている人の意見を聞きたい
・実際に買う前に、注意しておくべきことを知っておきたい
そんな方々に読んでいただきたい記事となっています。
最後まで読めば、Insta360の注意点を知れるだけでなく、カメラの性質を理解することで安心して自分の撮影をスタートできますよ。
アクションカメラ独特の不安定さ
高画質の360°映像を気軽に撮影できるInsta360は、GoProやOsmo Pocketなどと同じアクションカメラに分類されます。
小型で持ち運びやすく、仕事や趣味を問わずアクティビティや街中での撮影にも使用しやすい一方で、フリーズしたり最悪の場合データが消失するなど、アクションカメラ独特の不安定さがあることは否めません。
ここでは、Insta360のアクションカメラならではの注意点をまとめていきます。
順番に見ていきましょう。
・本体が熱くなりやすいことに注意
Insta360に限った話ではありませんが、アクションカメラは撮影を続けていると本体が発熱しやすいという注意点があります。
特に昨今、猛暑が続く夏の炎天下における撮影では、カメラ本体を手で触れ続けることが辛くなるレベルになることも多く、120fpsや8Kなどの高画質撮影では本体発熱が顕著になります。
また、頻発するわけではないものの、本体が熱くなりすぎると画面のタッチやスワイプがもたつく、プレビューが重くなりスムーズに再生されないといった挙動の乱れが発生したり、正常にデータが記録されなくなることにも注意が必要です。
Insta360は撮影中でも充電ができる(充電に必要な入力電圧と電流は 5V 3A)ものの、本体を熱くする原因にもなるので注意が必要と言えるでしょう。
対策ポイント
・炎天下での撮影では異常が出ることを前提に使うこと
・撮影中の充電を避け、予備のバッテリーやモバイルバッテリーを持ち歩くこと
・高画質の撮影は、ここぞという場面以外ではなるべく避けること
・Micro SD カードの異常や破損
Insta360での撮影は気軽に行えるものの、スマートフォンの動画撮影とはやはり負荷のレベルが違います。
適切なMicro SDカードを用いなければ映像が途切れたり、破損することは十分に起こり得ます。
公式からは、UHS-IバスインターフェイスとビデオスピードクラスV30定格を備えたexFAT形式のMicroSD カードを使うことが推奨されています。
なお、仮に360°動画を5.7Kで60秒撮影すると、データのサイズはおよそ900MBになりますので、上記規格をチェックした上で最低でも60GB以上のものを用意しておくと良いでしょう。
また、公式サイトではUHS-II、UHS-III Micro SD/TF カード、または 1TB を超えるSDカードは特にInsta360 X3モデルで互換性がなく、録画が失敗するため使用しないよう注意喚起されています。
対策ポイント
・適切なMicro SDカードを用意すること
・スマートフォンの動画撮影よりもカメラに負担がかかる撮影であると理解しておくこと
バッテリーについて
アクションカメラは普通のカメラよりも負担が多く、どうしてもバッテリーの消耗が激しくなります。
スマートフォンでの撮影感覚に慣れていると「えっ、バッテリー残量もうこれしかないの?」と驚くこともあるかもしれません。
Insta360のバッテリーの取り扱いは撮影における最も重要な注意点の一つであり、弊社でも特に気をつけて撮影に臨んでいる点でもあります。
順番に見ていきましょう。
・バッテリー容量と駆動時間
Insta360公式サイトでは、X3モデルのバッテリー容量は 1800mAh、5.7K 30fpsでの撮影をした場合の駆動時間は約 81 分になると案内されています。
弊社では購入してから半年未満のInsta360 X3、X4モデルを複数台使用していますが、体感としてフル充電の状態で、5.7K 30fps撮影を合計1時間ほど行うとバッテリー残量がゼロになるということが社員間での共通認識となっています。
不要な時は極力電源を切り、長丁場の撮影ではスペアのバッテリーを用意するとよいでしょう。
また、バッテリーは専用の充電スタンドがなくても、カメラ本体をUSB-Cに接続すれば直接充電できます。
移動中は車などで充電できると安心です。
なお、前述したように発熱につながるので、充電中は電源オフにしておくことをお勧めします。
対策ポイント
・合計1時間ほどの撮影で、フル充電のバッテリーがゼロになると認識すること
・1日を通して撮影したい場合はスペアのバッテリーを用意すること
・移動中、車内などでこまめに充電するとGOOD(※発熱防止のため電源はオフにすること)
・スペアのバッテリーはぶっちゃけ高いがこれしかない
前述した通り、スペアのバッテリーがあると安心できるInsta360。
しかし、やはりスペアのバッテリーは安くなく、公式純正品のX3用で6,200円、X4用で7,600円と案内されています。
加えて、X3とX4のモデル間でバッテリーの互換性が一切ないことにも注意が必要です。
X3モデルのバッテリーは、X4モデルと大きさが違うため挿入することができません。
今後、新モデルでは過去モデルのバッテリーと互換性があるかもしれませんが、現状ではモデル間でバッテリーの使い回しはできなくなっています。
Insta360を用いた撮影を仕事などで使うことを検討している場合、スペアが複数必要となり、初期費用がかさむ可能性があることも覚えておきましょう。
なお、弊社では2,000円ほどと安価な非正規品バッテリーも試しましたが、バッテリー挿入口と微妙にサイズが合わず外れそうになったり、そもそも認識されない、充電ができていないといったトラブルも多発。
やはり購入するなら純正品一択と言えますが、コスパがいいとは言えません。
対策ポイント
・スペアのバッテリーを購入するなら正規品のものにすること
・購入が難しい場合、モバイルバッテリーや車内充電などの準備をしっかり行うこと
360°撮影ならではの注意点
今までのカメラではありえない360°での撮影は、動画撮影が好きな人なら一度は強く興味が惹かれるものではないでしょうか。
ただし、Insta360での360°撮影はそのユニークさゆえに一般的な撮影とは異なる注意が必要となります。
場合によっては「自分が撮りたいと思った映像と違う!」とがっかりしてしまうかもしれません。
360°撮影の注意点について、順番に確認していきましょう。
・近すぎる撮影、遠すぎる撮影に注意
Insta360のカメラは360°での撮影ができますが、その画角の広さゆえに被写体との距離に注意が必要です。
レンズの特性から、レンズの目の前にあるものは丸みを帯びて歪んで写ってしまいます。
公式サイトでは被写体から60cm以上離すことが推奨されているため、綺麗に撮影したい場合は少し離れて撮影するようにしましょう。
逆に、遠くの景色は実際よりも遠く写っているように見えることも覚えておきましょう。
例として、近年のiPhoneで使えるようになった0.5倍の広角撮影をイメージしてみてください。
従来の撮影より広く撮影することができますが、その分遠くにある被写体ほど実際よりも小さく写って見えるという感覚があるのではないでしょうか。
Insta360は旅行やアクティビティで活躍するカメラではあるものの、肉眼で見て圧巻の景色に感じられる山や海、建築物などの遠くにある景色をInsta360で撮影すると、遠過ぎて迫力が伝わりづらくなる恐れがあります。
対策ポイント
・近すぎるものは歪むので、被写体から60cmほど離して撮影すること
・遠くの景色は小さく映り、肉眼で見るよりも迫力が伝わりづらくなることに注意する
・レンズの白飛びやぼやけ、フレアに注意
Insta360は、スマートフォンのカメラよりもかなり白飛びしやすい印象です。
たとえば昼の室内で360°撮影を行うと、窓から見える外の明るい景色は白飛びしてほぼ見えなくなるということは珍しくありません。
(ここは強く改善を求めたい部分です)
これは特にX3モデルで顕著であり、最新型のX4モデルで多少改善された感覚はありますが、それでも白飛びは目立ちます。
また、レンズの真上に太陽があるなど直射日光が当たる、すぐ近くに照明があるといった状況ではフレアが発生し、場合によってはそれによって他の被写体が全く見えないということも起こります。(これは特にレンズを保護するカバーをつけていると発生しやすい印象です。)
撮影するときは必ず撮影プレビュー画面を動かし、フレアが写っていないか、しっかり被写体が見える状態になっているかチェックする癖をつけましょう。
また、野外の撮影などでレンズに虫がくっつくと、前述したレンズの歪みによりその姿が大画面に記録され人によっては不快な映像になってしまうことにも注意しましょう。
対策ポイント
・白飛びしやすいで、特に窓のある屋内撮影では注意して撮影すること
・レンズフレアが発生しやすいので、撮影中はしっかりプレビュー画面を動かし確認すること
・レンズがとにかく割れやすい
Insta360は半球型のレンズが前後に1個ずつ付いており、360°の映像を撮る性質上、それらがカメラから少し飛び出ています。レンズがカメラ内に埋まっていると、綺麗に360°映像が撮影できないためです。
このため、Insta360は最も繊細な部分であるレンズが常に外に剥き出しになってしまっています。
三脚を立てて撮影者がその場を離れるという場面も多いため、とにかく転倒のリスクが多く、実際にカメラを倒しレンズを割ってしまったという声が後を絶ちません。
高い修理代に落ち込んでしまうことも珍しくないでしょう。
ちなみに修理代は大体1万円少々でした(2回経験済み)。
Insta360 careなどの保険は必ず入っておきましょう。
X3、X4モデルともに公式からレンズカバーが販売されてはいますが、1セットあたり最低でも3,000円ほどかかる上にこのレンズカバー自体も割れやすく、あくまで一時的な身代わりにしかならないことを忘れてはいけません。
前述したレンズフレアの件もあるため、Insta360のレンズカバーは今後の改善が急務であると感じています。
対策ポイント
・レンズはとにかく割れる、倒れたら割れる、修理代は高いということを忘れない
・レンズカバーは脆く使い捨てな上に安くないが、本体レンズが割れるよりマシなので必ず用意する
アプリの接続と操作感
Insta360の撮影では、スマートフォンで遠隔操作できる専用アプリを利用できます。
360°カメラは撮影者である自分自身も写ってしまうため、それを避けるためどこかに隠れて撮影する際にこのアプリは大いに役立ちます。
自分がカメラの目の前にいなくても撮影の開始・終了ができ、まるで監視カメラのように周囲の景色をチェックできるとても便利なものではありますが、もちろん改善点もあります。
アプリに関することだけでなく本体の操作感に関してもここでまとめていくので、順番にチェックしていきましょう。
・アプリの接続の悪さ
Insta360撮影用アプリはカメラ本体を遠隔で管理できるものの、カメラとスマートフォンの接続距離は長くありません。
周囲の環境や障害物の量にもよりますが、5メートルほど離れると接続が切れたり、操作ができなくなる場面も目立ちます。
これは特にX3モデルで顕著であるため、撮影の際は慣れが必要な点と言えるでしょう。
また、このアプリは便利であるもののカメラの電源を切るたびに再接続が必要となります。
一回の接続は短くても数十秒、エラーが起こるとそれを複数回繰り返さなければならず、1日に何度も撮影を行う場合は注意が必要です。
この記事冒頭でも書いたようにInsta360は発熱しやすく、またバッテリーの持ちも悪いためこまめに電源を切ることが大事であるものの、電源を切るたびに数十秒の接続が求められることは煩わしく感じてしまうかもしれません。
もちろん、アプリを接続せずとも撮影を行うことはできますので、状況によって使い分けると良いでしょう。
対策ポイント
・アプリ使用中、安定した接続のためにカメラから離れすぎない
・アプリを使用する際は、障害物の多い環境などをできるだけ避ける
・カメラの電源が切れるたびにアプリの再接続が必要になると覚えておく
・マイクの機能について
Insta360のマイクは高品質で、しっかりと周囲の音を録音できます。
実際、弊社の撮影では鳥の鳴き声や木々の揺れる音、鍾乳洞で水の滴る音をしっかりと記録することができ、臨場感のある撮影を実現できています。
一方、強い風が吹いている場所では風切り音が目立ち、せっかくの映像の臨場感が失われがちです。
基本のマイク機能として方向性強調、風切り音低減、ステレオといったオーディオモードがあるので、撮影のシチュエーションに合わせて切り替えることを忘れないようにしましょう。
ただし、高所などの特に風が強い地点では、風切り音低減モードでもカバーできないほど風切り音が入ることも目立ちます。
映像のみ記録したい場合は気にしなくても構いませんが、環境によってはうまく音が記録されないことをあらかじめ理解しておくとよいでしょう。
対策ポイント
・シチュエーションに合わせてオーディオモードを使い分ける
・風が強い場所では風切り音低減モードは必須
ただし、あまりに風が強すぎる場所では風切り音を消せないことに注意
公式アイテム「見えない三脚」について
360°の撮影では、その特性上カメラを持っている撮影者も画面内に映り込んでしまいます。
カメラ本体を支える三脚も映り込んでしまうのでは…という心配もあるかもしれませんが、公式から発売されているサポートアイテム「見えない三脚」は、三脚本体がとても自然に画面内から消えてくれるので便利です。
「見えない三脚」は軽く長さも十分、折りたたむと小さくなる上に自撮り棒としても使えたり、釣り竿のように使えば面白い映像が撮れるなど撮影の幅が広がるマストバイのアイテムとなっています。
ただし、いくつかの注意点があることも事実です。
使い方を間違えて後悔しないよう、順番に確認していきましょう。
・便利だが注意点も多い
とても軽く運びやすい三脚であるものの、それ故に何かがぶつかると簡単に倒れてしまうことに注意しましょう。
特に風が強い場所、人が往来する場所では細心の注意を払いましょう。前述の通りInsta360はレンズが剥き出しになっているため、倒れるとレンズが割れる可能性が非常に高いと言えます。
倒れやすい環境では三脚として設置せずに自分の手でもち、頭の上にカメラを掲げるようなイメージで撮影するとよいでしょう。
この場合、自分の姿は映り込んでしまうものの、周囲の景色をしっかりと画面に収めることができます。
どうしても自分の姿を消したい場合はPremiere Proなどの動画編集ソフトでモザイク処理をしましょう。
また、野外で三脚を立てて撮影する機会が多い場合は公式から発売されている「アウトドア三脚」も必須アイテムと言えます。
アウトドア三脚は足を伸縮させることができ、通常の倍ほどの足で安定させることができます。
なお、どの三脚も使い勝手がよく、頻繁に使用する機会が多いからこそ、手や指を挟まないように注意しましょう。素手で取り扱い、撮影時に手に血豆を作ってしまった、という声は少なくありません。
対策ポイント
・倒れやすい屋外での撮影を行う場合、アウトドア三脚の購入を検討する
・人混みなどで撮影する場合は、三脚を抱えてカメラを頭上に掲げて撮影する
・見えない三脚は便利だが、使用の際に手や指をに挟まないよう注意する
まとめ:注意点を正しく理解して撮影に臨もう!
ここまで、Insta360を使用する際の注意点についてまとめていきました。
さまざまな改善点はあるものの、やはり気軽に360°映像を撮れる素晴らしいカメラであることに間違いはありません。
正しく注意点を理解し、しっかりと準備をした上で気持ちよく撮影に臨みましょう。
360°カメラがあると撮影の幅が広がり、今までにないクリエイティブな活動が実現できますよ。
株式会社モノガタリでは、Insta360をはじめとした360°撮影機材を用い、ホテル・旅館特化のVR映像サービスYADORI VRや、VRで全国観光スポットにお出かけできるサービスBuralitなど360°映像・VR映像の撮影事業を行っています。
実際の360°撮影のイメージは、下記の動画からチェックしてみてください。