「VRのゲームをやってみたけどイマイチだった」
「流行ってはいるけどなんとなく期待外れ、本当に将来性はあるの?」
そんな意見が飛び交うことも少なくないVR業界。
実際に、VR機材を買ったはいいけれど飽きてしまい、部屋でホコリを被っているという意見も目立ちます。
そんな中、とある有名ゲーム配信者が遭遇したVRゲーム上での「偶然の出会い」により、VRコンテンツが大きな注目を浴び、実際にVRゴーグルを購入するユーザーが増え続けています。
CMを打ったわけでも、特殊なマーケティングがあったわけではないにも関わらず、
ここまで多くの人々が心を打ち、興味関心を強めた背景にはどのようなものがあるのでしょうか?
この記事では、ユーザーがVRやそれを使ったエンターテインメント体験に期待していることについて考察しています。
近い未来、世界中で大きな市場になると弊社も期待しているVRコンテンツが、なぜ人の心を打つのか。
VRコンテンツへの理解を深めていきましょう。
ゲーム配信者「スタンミ」が出会ったVRchatに住む宇宙人
事の発端は、著名なゲーム配信者「スタンミ」さんが2024年7月24日にアップロードした動画。
スタンミさんがVR上で様々なワールドにアクセスして散策したり、他のプレイヤーたちと交流を深めることができるVRゲーム「VR Chat」をプレイしていた際、奇妙の外見をした「宇宙人」に突然話しかけられました。
スタンミさんが出会ったのは、VR Chatで普段から色んな人と会話を楽しんでいる一般のユーザー「トコロバ」さん。
トコロバさん(宇宙人)はスタンミさんがチャンネル登録者数50万人、数千人の人が視聴するライブ配信中であることを一切知らずに彼に話しかけ、徐々に仲を深めていきます。
その二人の気まずい会話と、知らない宇宙人が急に話しかけてきた、という内容は多くの視聴者の興味を集めました。
しかし、この段階ではまだ視聴者たちはトコロバさん(宇宙人)に対し
「なんか気持ち悪い…」
とネガティブな反応も少なくありませんでした。
この段階では、この動画にはVR Chatへの強い関心、ならびにVRゴーグルへの購入を促す要素はなかったと言えます。
ただ、軽快なスタンミさんと、奇妙で愛らしいキャラクター性を持つトコロバさん(宇宙人)との絡みをもっと見たいと感じた視聴者は多く、二人の出会いの動画はYouTubeの急上昇1位、のべ500万回再生されるなど強い関心を集めました。
そこから、スタンミさんとトコロバさん(宇宙人)の二人は様々なワールドへの旅を配信していきます。
そうする中で、視聴者の反応は大きく変わっていくことになります。
「気持ち悪い」ばかりだったチャット欄が「大好き」に溢れるまで
スタンミさんは、トコロバさん(宇宙人)に初めて会った時から「人としてめっちゃ好き」とコメントしていました。
それに連動するかのように、奇妙な外見のアバターを持つトコロバさん(宇宙人)の言動や行動の愛らしさや優しさを見た視聴者たちのコメントは「気持ち悪い」から徐々に、
「なんか好き」「声が可愛い」と肯定的なものに変化していきます。
そして、二人が「エモいワールド」と呼ばれる場所へ出かけたことを契機に、トコロバさん(宇宙人)の人気が絶対的なものになりました。
ワールド上でスタンミさんとトコロバさん(宇宙人)が笑いながら花火を試したり景色を見ている時に漏らす「すげぇ…!」という嬉しそうな声は、ゲームの中であることを忘れてしまうような、本当に楽しんでいる声でした。
そもそも、本来自分で遊ぶためのゲームを他人がプレイしている映像を見る「ゲーム実況・配信」と呼ばれるものが人気コンテンツとなった背景には、自分が感じた感情を誰かとリアルタイムに共有したいという気持ちがあるはずです。
その中で、初めはトコロバさん(宇宙人)に対して否定的な内容が目立った視聴者たちのコメントは、いつの間にか強く肯定的なものばかりに変化していきます。
⚫︎ たかぶる人気の中、突如の別れ
配信が終わったあとも、トコロバさん(宇宙人)の人気は右肩上がりに上がっていきます。
そんな中、トコロバさん(宇宙人)は2024年8月24日、スタンミさんとの配信の終わりに突如お別れを発表。
「お別れなんです。遊ぶのは今日で最後」と話し、戸惑うスタンミさんも「色々あるんだよな」と返事。
トコロバさん(宇宙人)は飛行機に乗り込んでVRの空へ消えていきました。
コメント欄には悲しみと感謝の声で溢れ、以降数日間はX(旧twitter)などで「#トコロバ ロス*」の言葉が目立つようになりました。
(*ロス…今まで見ていた番組や推しの活動が止まり、見れなくなる喪失感を表現する際に主にネット上で使われる表現)
しかし、その喪失を埋めるかのように、あるいはそれに勇気づけられたからか、その日を境にVR Chatへ参入する新規ユーザーが急増。
VRゴーグルを新たに購入したという声もSNSで多く見られました。
スタンミさんがトコロバさんと出会ってから、ここまでたった1ヶ月ほどの出来事でした。
こうして、最初は否定的なコメントが目立った一般宇宙人・トコロバとの夏は幕を閉じ、結果的に多くの人に対してVR ChatをはじめとしたVRコンテンツへの強い興味関心を促すことになりました。
VR Chatは「なりたい自分になる手段」 人々は「人との繋がり」を求める
VR Chatは今から10年ほど前、2014年からあるサービスです。
VRの黎明期から今に至るまで人気のサービスであり、多くの人がワールドを作って互いに訪れあい、時を過ごしています。
しかしながら、VR特有の独特な操作感や画面酔いなども起きやすく、ストレスが少ないとは言い切れません。
オンライン上でのコミュニケーションに特化した似たような人気サービスとしては「アメーバピグ」もあり、そちらはVRを用いないためにストレスフリーなコミュニケーションが楽しめます。
また、VR ChatではVRを用いた様々なゲームをプレイすることもできますが、それらはVRであるという点を除けば既存のゲームに似た作りです。
つまり、VRという要素を除くとVR Chatでしかできないゲーム体験は多いとは言えないのです。
肝心のVR要素も、慣れが必要でありストレスも多い。
離れていくユーザーも多いというのも頷けますし、筆者本人にも似た経験があります。
しかし、そういった改善点が少なくない状況であるにも関わらず、スタンミさんとトコロバさん(宇宙人)の絡みが動画で拡散され、多くの人々がVR Chatに参入していきました。
⚫︎ VR Chatは「終わらない放課後のようなもの」
以前、筆者はVR関連のベンチャー起業家から
「VR Chatは終わらない放課後のようなもの」
と言われたことがあります。
スタンミさんとトコロバさん(宇宙人)の動画の魅力は、お互いに実際に会ったことがないにも関わらず心を通わせ、友達になっていく「経緯」にこそあったと考えられます。
ユーザーは決してゲームをやりたいのではなく、その先にある人との繋がりを求めているのではないでしょうか。
また、トコロバさん(宇宙人)がスタンミさんとの共演により劇的に知名度を高め、メディアから取材を受けた際「このアバター(宇宙人)を見た時、一目惚れした。自分の魂の形と一番そっくりでした。」というコメントも残しています。
少なくともVR Chatではそんな風に「自分があるべき姿」をアバターとして纏い、自分のありたい自分として他者と接することができるのかもしれません。
社会の中で役割や心理的な仮面が増え、様々なプレッシャーがかかる現代。
多くの人がSNSやインターネットに没入するのは、きっとそんな現代社会の中で自分を保つための自己表現を行い、それを共有して仲間を増やしたいという気持ちがあるのだと思います。
そんな中、YouTubeの急上昇に現れたVR Chatでのスタンミさんとトコロバさん(宇宙人)が織りなす景色は、動画を見ている自分自身もまた、あるべき自分として社会に接したいという気持ちにさせたのではないでしょうか。
圧力のある社会であればあるほど、VR Chat、ひいてはそこに関連するあらゆるVRコンテンツへの期待が拡大していくと考えています。
登録者数314万人の大御所配信者へ普及 VR Chatへの期待がさらに広がる
500万回以上の再生数を誇り、2024年夏の短くも濃いムーブメントとなったスタンミさんとトコロバさん(宇宙人)の旅。
それはトコロバさん(宇宙人)の活動休止もとい宇宙人としての母星への帰還によって終わりを迎えましたが、その余波は止まることを知りません。
スタンミさんはその後、日本国内でも超大手、314万の登録者を持つ大御所配信者2BROの弟者さんとVR Chatのコラボ配信を行います。
その後はさらに、Vtuberとして人気の兄弟グループぽこピー(ぽんぽこさん,ピーナッツくん)も交え、弟者さんは様々なワールド探訪、VR体験を重ねていきます。
弟者さんはスタンミさんのVR Chatをプレイする配信を見て強く興味を惹かれたらしく、その気持ちに応えるような形でスタンミさんから共演オファーをかけたとのこと。
特筆すべきは、2BROの弟者さんにとってはスタンミさんやぽこピーといった他の配信者とコラボすることが今まであまりなかったということです。
Vtuebrをはじめ多くの配信者たちは、互いに様々なコラボを行い、認知を拡大させていくという戦略が主流と言え、実際にスタンミさんやぽこピーのお二人も多くの配信者とコラボを行なってきました。
この夢のコラボにより、弟者さんという著名配信者が持つ大きな影響力によりVR Chatの認知はさらに拡大していくことになります。
これまで他の配信者と積極的に交流することのなかった弟者さんが、VR Chatを通して様々な人々と交流を深めていく姿を見て、VR Chatの本質的な魅力に気が付くユーザーはこれからも増えていくことでしょう。
Vtuberのファン、2BROのファン、スタンミさんのファン、VR Chatのファンが互いに互いのコンテンツを視聴する結果、盛り上がって市場は拡大、現代社会に生きる人々が自分として生きる交流の手段として、VRが選択される時代はますます間近に迫っていると言えます。
結論:VRコンテンツは、現代社会に必ず必要なものになる
今回のスタンミさん、トコロバさん(宇宙人)の一連の関わりは、1ヶ月というとても短いものでした。
にも関わらず、多くの人がVRの魅力に気がつき、その勢いは弟者さんをはじめとする多くのインフルエンサーにも波及しています。
VRが持つ表面的な目新しさや斬新さに触れるだけではすぐに理解のできない、VRコンテンツが持つ本質的な魅力にインフルエンサーが気がつき始め、それを礎に拡大する一方になるはずです。
VRコンテンツは徐々に、生活に馴染む当たり前のツールの一つになっていき、今後大きな市場に発展する期待が持てるといっても過言ではないのでしょうか。
YADORI VRでは、そういったVR業界の拡大に大きな期待を寄せながら、VR動画の撮影・制作を行なっています。ご興味のある方は是非お気軽にご連絡ください。